犬の飼い主だから殺処分を考える

どういう気分でこの本を購入することにしたのか、迂闊にも忘れてしまいました。
たぶん衝動買いだったのだろうと思います。

本の内容はといえば、衝撃的なタイトルどおりに犬が大量に殺処分されている現実が書かれています。これまでもインターネットで断片的に知っていたこともありましたが、ちゃんとした本を読んでおくことに意味があるかなと思っています。

犬を捨てる理由

本書の題名は、「犬を殺すのは誰か ~ペット流通の闇~」であるとおり、殺処分に至る一番の原因を流通の実態にあるとしています。

それが正しいのかどうかはわかりませんが、文字通りに受け取ってしまってはボクに「かかわり」のない話になってしまいます。なので、犬の飼い主としての立場から犬を捨てる理由を考えてみたいと思います。

AERA編集部では2010年に全国の自治体にアンケートを実施していました。下記表は29の自治体が引取りした犬種のワースト3とトイプードルの頭数及び全体に対する比率です。
(本書P.22、巻末P.2~9)

順位 犬種 頭数 比率
1位 雑種 7,885 65.0%
2位 柴犬 701 5.8%
3位 ダックスフンド
(ミニチュア含む)
481 4.0%
14位 プードル
(トイ含む)
109 0.9%

数字は2007年4月1日~2008年3月31日までの統計数字で、全部で81犬種ありました。

雑種については、地方などで勝手に子犬を生んだりしていることなどが推定されるので、他の犬種と同等には扱えません。
また、2007年当時の犬種別の絶対数に影響を受けるため、ここ数年の人気犬種がトイプードルであることから、現在はトイプードルの数が増えて順位に変動があることが予想されますので、1つの参考程度に見ておくのがよいでしょう。

それ以上に注目したいのは、各自治体への引取り申請時の理由の集計結果です。
(本書P.28~29)

理由 柴 犬 ダックスフンド
(ミニチュアを含む)
プードル
(トイを含む)
飼い主が病気・死亡 15.7% 18.2% 26.5%
転居 9.6% 14.4% 22.5%
金銭的な問題 2.2% 0.4% 2.0%
鳴き声がうるさい 8.4% 7.3% 9.8%
人を噛む 17.2% 8.2% 2.9%
犬の病気・けが・高齢 18.5% 24.0% 26.5%
その他飼育不能 28.4% 27.5% 9.8%

引取り頭数のワースト1位の雑種については、「その他飼育不能」が60%以上を占めていて特殊であるため除外しました。

犬を捨てる理由・共通する理由

3犬種に限定して表にしましたが、その中でも共通している理由があることがわかります。それは、飼い主と犬のどちらかが病気にかかってしまい、それが犬を捨てる理由になっているということになります。病気にかからないことが理想ですが、なかなか難しい問題です。

見落としてならないのは、飼い主が病気にかかることよりも「犬が病気・けが・高齢」を理由に捨てる割合の方が多いという点です。最後まで犬の面倒をみるのは飼い主の責任であるはずなのですが。

犬を捨てる理由・柴犬

柴犬の場合、「人を噛む」という理由が突出しています。柴犬は小型犬ではなく大型犬でもありません。このことが、しつけが中途半端になってしまう理由なのではないかと推測できます。

ちなみに、「鳴き声うるさい」とあわせると理由の25.6%となることから、しつけをしっかりと行っていれば柴犬を捨てる人が4分1程度は減る計算になります。

犬を捨てる理由・プードル(トイを含む)

プードルのほとんどはトイプードルですが、捨てる理由に特徴がよく出ているように見えます。

まず、転居という理由で捨てる飼い主が最も多いことが目に付きます。アパートやマンションに1人暮らしだった飼い主が引越しする先で飼えなくなったというような状況が目に浮かびそうです。

また、飼い主、もしくは犬が病気にかかった理由で捨てる比率も目だって高いのも特徴です。仮に1人暮らしであれば、このような状況に陥りやすいことは明らかです。1人暮らしで犬を飼うのなら、自分が病気になったり犬が病気になったしたときに、かわりに面倒を見てくれる誰かを確保しておく必要があるようです。

概して、気軽に飼い始めるのだけれど気軽に捨てるのがトイプードルの飼い主ということになりそうです。

犬を捨てる理由・ダックスフンド(ミニチュアを含む)

ダックスフンドは、柴犬とプードルの中間という感じです。
気になるのは「その他飼育不能」という理由で、柴犬近い比率となっています。

この項目に含まれているのは、「飽きた」「子犬が生まれた」「処置に困る」「離婚した」等の他、未記入もこの理由の含めているようです。

8週齢規制

本書の後半の多くは8週齢規制について書かれています。

8週齢規制とは、生後8週間(56日間)未満に親犬から子犬を引き離してしまうと将来問題行動を起こす犬になる確率が高くなることから法律で規制するものです。ヨーロッパやアメリカでは既に常識化している法律です。

日本では、2012年8月に改正され2013年9月に施行された動物愛護法に8週齢に盛り込まれたとはいっても、実効性のない形にとどまってしまいました。骨抜きの法律となってしまったのです。

この点についての著者の悔しさや失望感が、本書の後半ににじみ出ているような気がします。日本人のペットに対する未成熟さが法律に反映してしまったようです。

そういえば、アメリカでは12週齢未満の子犬を撮影に使ってはダメなのだそうです。日本のテレビでは、芸能人が子犬を抱いて「カワイイー」などと言っているのを何度か目にしました。それを何の疑問も持たないで見ていたボクは、ペット後進国の1人だったみたいです。

知っておく義務

本書の最初のページには下記の記載がありました。

本書は2010年9月、小社より刊行されたものに加筆しました。

小社とは朝日新聞出版のことです。
元々は「AERA(アエラ)」誌上に2008年12月から6回の連載記事だったものを2010年9月に単行本として出版したものです。そして、さらに加筆し文庫本として2013年7月に出版されたという経緯になっています。

その間、動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)は2012年8月に改正され、2013年9月に施行され、現在まで既に6ヶ月がたっています。

そのため、「AERA」に連載された当時と比べると犬を取り巻く環境は少なからず改善が見られるようになり、その結果、本書の内容に古臭さを感じる部分もあるのは確かです。

だからといって、犬を取り巻く環境問題がすべて解消したわけではなくて、本質的な問題は残されたままになっているようです。

犬を飼っている者の1人として、この「ペット流通の闇」を知っておく義務がボクにはあるのではないかという気がしています。

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